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クラウドファンディングで犯す大きな間違いとその解決方法(ヒント:ストーリー)

ドリームレイジングCAFEのマスターです

クラウドファンディングのプロジェクトで最も多い間違いの一つが、「読者とコミュニケーションが出来ていない、つまりメッセージを伝えられていない」ということです。米国のクラウドファンディング・プラットフォーム「indiegogo」の共同創業者Danae Ringelmann氏は次のように語っています。

クラウドファンディングで多くの人が犯す一番の間違いは、お金を得ることばかりに気を取られ、読者に対してセールスしかしていないということです。クラウドファンディングは自分都合のビジネスの場ではありません。

また、indiegogoでクラウドファンディングに挑戦したハードウェア製品「Saent」のメンバーは、インタビューで次のように語っています。

私たちは様々な面でプロジェクトページを改善しました。例えば製品のアピールポイントを見直したり、リターンの内容や価格を見直したりなどです。それらの改善で、私たちは読者にメッセージを伝えることができていると考えていました。しかし、本当は読者との会話は出来ていなかったのです。

では、一体どのようにすれば読者にメッセージを伝えることができるのでしょうか?そして、支援に繋げるにはどうすれば良いのでしょうか?それには、「何を伝えるのか」そして「どのように伝えるのか」を考えなければなりません。そこで今回は、この2点について考えてみたいと思います。

何を伝えるのか

過去の記事で文章を作成するためのステップをご紹介しました。まずは簡単におさらいしてみましょう。

関連記事:【クラウドファンディング講座#2】支援を集めるライティングの3つのステップ

文章を作成するステップは次の3ステップになります。

  • Step1:ターゲットとなる読者の人物像を作成する
  • Step2:他のプロジェクトをリサーチする
  • Step3:文章を書く

Step1では「デモグラフィック(人口統計学的属性)」や「サイコグラフィック(心理学的属性)」を使い、年齢・性別・居住地・興味・関心など人物像を具体化します。より人物像を深く理解するために「共感マップ」という手法も併せて利用すると効果的です。

Step2では他のプロジェクトを5~10個程度ピックアップして、文章構成や表現方法などをリサーチします。

そして、Step3では以下の質問に答えることを意識しながら文章を作成します。

  • あなたは誰ですか
  • このプロジェクトにはどのような経緯・背景がありますか
  • このプロジェクトはどのような事をするのですか
  • このプロジェクトのアピールポイントは何ですか
  • なぜあなたのプロジェクトにはお金を支援する価値があるのですか
  • このプロジェクトが完了するまでのスケジュールはどのようになっていますか
  • このプロジェクトに必要なお金はいくらですか
  • 集めたお金はどのように使われますか
  • 支援者にはどのようなリターンが提供されるのですか
  • 目標より多くの金額が集まった場合どのようにしますか
  • 資金を集めてプロジェクトが完了するまでの間、支援者に対してどのようなフォローが行われますか

しかし、ただ上記の内容を盛り込めば良いかというと決してそうではなく、何にフォーカスにして文章を作成するのかが重要になります。そして、失敗したプロジェクトの多くに共通していることは、”what(自分のアイデアが何なのか)”にフォーカスして文章を作成しているということです。

私は地域活性化のために熊本の●●町に古民家を活用したコワーキング・カフェを作ります。カフェのコンセプトは「人と人がつながる未来創造の場」です。カフェには高速無線LAN、プロジェクター、コピー機、3Dプリンタ、冷蔵庫、電子レンジ、ロッカーなどを完備。無料のドリンクバーも設置します。また、ビジネス本や各種専門書、新聞も無料で貸し出します。内装のデザインは…(略)

focus-on-what

確かにあなたのアイデアは素晴らしいかもしれません。しかし、あなたが”what”ばかりにフォーカスしていたら、あまり支援は集まらないでしょう。なぜなら、”what”では読者の感情を刺激することが難しいからです。クラウドファンディングでは読者の感情を刺激しなければなりません。感情が支援したいという欲求を刺激し、欲求が行動を促すのです。

では、一体何にフォーカスすればよいのでしょう?それは”why“です。人間は文字情報を見た時、脳の言語処理に関わる部分がその意味を理性的に判断しようとします。つまり、”what”の情報は理性によって処理される情報です。しかし、”ストーリー“を聞いた時は、言語処理だけでなく本能をつかさどる部分も活性化し、人間の行動に影響を与えます。そして、“why”こそが”ストーリー”であり、読者の感情を刺激する大きな役割を果たすのです

英国の作家のサイモン・シネック氏も”why”から始める重要性を「ゴールデンサークル理論」として唱えており、「Why:なぜ」⇒「How:どうやって」⇒「What:何を」の順で想いを伝えると共感を生むことができると語っています。

ストーリーを構成する3つの要素

ストーリーと聞くと壮大なものをイメージされるかもしれませんが、心配する必要はありません。一般的にあなたのストーリーを構成する主要な要素はたったの3つです。

  1. あなたの価値観や信念
  2. あなたの体験
  3. あなたの個性

この中の「あなたの価値観や信念」が、言わばあなたの”why”にあたる部分です。そして、「あなたの体験」や「あなたの個性」がストーリーをより魅力的で印象深いものにしてくれます。以下に、あなたが自分のストーリーを見つける上で手掛かりとなる質問を9つ記載しますので、これらの質問に答えてみてください。

質問1

あなたはこれまでにどのようなことをしてきましたか?そして、それらのことから何を学びましたか?忘れられない経験や教訓になった経験は何かありますか?

回答例)私は大学を卒業して上京し、中堅のSIerでシステムエンジニアとして10年間働きました。その後、転職してベンチャーの事業会社でWebディレクターとして5年間働きました。今は熊本に戻り、フリーランスとしてビジネス支援のコンサルタントを行っています。中でも、ベンチャーの事業会社は新しいことにどんどんチャレンジする自由闊達な環境で、多くのことを学びました。「完全を求めない。不完全を恐れずに世に出して行け。」という…(略)

質問2

あなたはどのような経緯で今やっていることに辿り着いたのですか?そして、自分のやっていることをやる理由は何ですか?何があなたの情熱を掻き立てているのですか?

回答例)きっかけは2016年4月の熊本地震です。ボランティア活動に参加するために休暇を取って熊本に戻ったのですが、故郷の熊本の被害を目の当たりにし大きな衝撃を受けました。高校時代の友人で阿蘇で宿泊施設を営んでいる子に話を聞いたのですが、阿蘇の観光業が受けたダメージは甚大で。。。自分が何かチカラになれないかと色々と考えた結果、自分のITの経験を活かしてビジネスのお手伝いをしようと考えたのです…(略)

質問3

あなたが直面した大きなチャレンジは何ですか?あなたはそれにどのように立ち向かいましたか?そして、そのチャレンジは今日のあなたにどのような影響を与えましたか?

回答例)自分の故郷とはいっても上京してから15年以上も経っていますし、知り合いも少なかったので最初は思うように活動の場を広げることができませんでした。でも、とにかく周りを巻き込んでやろうと思い、自ら勉強会を開いたり、いろんなイベントに参加したりして活動の場を広げて行きました。さらにメディアを立ち上げて熊本県内を取材して回りました。そのような活動を続けて行くうちに…(略)

質問4

あなたがやってきたことは他の人にどのような変化をもたらしましたか?そして、そこからあなたは何を学びましたか?

回答例)最初はあまり乗り気じゃなかった人達も、徐々に私の活動を理解してくださり、いろいろ協力を申し出てくれるようになりました。これまであまりつながりのなかった年配の方たちとの交流も増え…(略)

質問5

あなたは自分がいる業界や地域社会などにどんな不満を感じていますか?

回答例)やはり地方ということもあり、東京に比べるとかなり保守的な感じを受けます。新しいことに挑戦しようという方が少ないです。話をしてみると決して新しいことに興味がないという訳ではないのですが、周りにそういう人がいないからかもしれません…(略)

質問6

あなたは一人の人間として、またビジネスにおいてどのような使命感を持っていますか?

回答例)人と人とを繋ぎ、新しいものを生み出していく。そして熊本を盛り上げて行くということを自分の使命と考えています…(略)

質問7

あなたの人生において、あなたに多大なる影響を与えた人達は誰ですか?

回答例)一緒に仕事をしてきた仲間達です。仕事で大きな壁にぶつかった時、いつも助けてくれたのは周りの仲間達でした。特に事業会社時代に起こった一つの出来事は、仲間の大切さを私に改めて教えてくれました。その出来事とは新規事業を立ち上げてから10ヶ月ほどたった時のことです…(略)

質問8

あなたが最も困った出来事や驚いた出来事、他の人に自慢できる出来事は何ですか?それ以外で面白いエピソードはありますか?

回答例)私は小中学校と剣道をしていたのですが、私の通っていた中学校は剣道の強豪校で、私が中学2年生の時に全国大会に出場しました。初めて東京武道館に立った時の感動は今でも忘れられません。私は団体戦の副将を務めたのですが…(略)

質問9

自分の仕事に関して、または私生活において好きなことは何ですか?

回答例)古民家を巡って写真を撮るのがライフワークになっています。長い間使い込まれて黒光りする美しい柱や梁、建具、暮らしの知恵が詰まった素晴らしい建築技術など、古民家でしか味わえない温もりと、長い歴史を感じられる所が魅力です。自分のブログやinstagramでも古民家の写真を沢山紹介していますが、古民家の良さを多くの人に知ってもらえたらと思っています…(略)

どのように伝えるのか

文章をただ書くだけではストーリーになりません。あなたのストーリーをストーリーとして読者に伝えるためにはいくつかの重要なポイントがあります。ここでは3つのポイントをご紹介します。

1.感情体験を与える

ストーリーがある文章とストーリーが無い文章の違いはどこにあるのでしょう?端的に答えるとストーリーがある文章の方が人を引きつけるチカラがあり、読んでいて面白いのです。そして、その違いを生み出す原因は、ストーリーが読者に感情体験を与えてくれるところにあります。

例えば、一度はご覧になった方もいらっしゃるかもしれませんが、小中高生向けの某通信講座ではDM(ダイレクトメール)に恋愛漫画を頻繁に使用しています。最初は勉強が出来なかった主人公が通信講座により成績が上がり、恋愛も成就するといった内容です。漫画を使ってストーリー化することにより、ネガティブな感情からポジティブな感情への変化を漫画の主人公を通して読者に体験させ、退屈な講座の紹介を魅力的なものに変えることに成功しています。

つまり、ストーリーには感情体験が必要不可欠であり、感情体験こそが読者の心を引きつける大きな役割を果たすのです。実際に以下の2つの文章を見比べてみてください。

【感情体験なし】

私の故郷は地震により大きな被害を受けました。私は故郷の活性化に貢献したいという想いを強く持っています。そこで、私のプロジェクトでは、古民家を利用した交流の場を作りたいと考えています。ヒトとヒトがつながる場を作ることで、これまで接点のなかった人達の交流が生まれ、新しい文化やビジネスを生み出すキッカケになってくれればと思っています。

【感情体験あり】

私の故郷はかつて自動車メーカーの工場があり、工場で働く人たちで活気にあふれていました。商店街にはいろいろなお店が軒を並べていましたし、夏祭りでは大勢の人が集まって大綱引き大会が開催されていたことも覚えています。学校も子供たちの活気であふれており、部活動が盛んでした。私は中学時代に剣道をしていたのですが、私の学校は剣道の強豪校で全国大会に出場したこともあります。

しかし、私が上京した2年後に自動車メーカーの工場が撤退し、工場で働いていた人達の多くが町を去って行きました。2016年4月に起きた熊本地震で15年ぶりに帰郷した私は、町の光景に愕然としました。かつての商店街の面影は全く無く、町は完全に活気を失っていたのです。地震で仕事を失った人もおり、多くの人の口から出るのは町の先行きに対する不安ばかりでした。

しかし、そのような苦しい状況の中でも町の再建のために取り組みを始めた若者達に出会いました。また、仕事を辞めてUターンしてきた人もいました。そんな彼らの高い志を目の当たりにして私の中に強い気持ちが芽生えました。このような意欲ある若者たちや地震で仕事を失った人たちを繋ぐ交流の場を作れないかと。そこから新しい文化やビジネスを生み出せないかと。私のプロジェクトでは、古民家を利用して地域のヒトとヒトとがつながる交流の場を作り、町の再建・地域活性化、そして町の人々の笑顔につなげたいと考えています。

1つ目の文章はプロジェクトの目的を簡潔に述べており、決して悪い文章という訳ではありません。しかし、感情体験がないためあまり印象に残りません。一方、2つ目の文章は「過去の良い思い出→絶望→再起」という感情の変化があることで、1つ目の文章より印象深いものになっていると思います。

2.読者のことを理解する

まず、1つ目のポイントは、読者にとって何が重要なのかということを理解し、ストーリーを読者にフィットさせるということです。何が読者の心を強く引き付け、何がモチベーションとなってあなたを支援するのかを理解しなければなりません。自分の伝えたいストーリーを一方的に伝えるだけでは読者の心を引きつけることはできないのです。

例えば、あなたが日本酒のクラウドファンディングを行うとして、あなたがどんなに細かいこだわりを伝えたとしても、読者の大半が日本酒初心者だったとしたら心には響かないかもしれません。例えば、あなたが音楽活動をしていて、あなたの夢を一生懸命訴えたとしても、あなたのことを全く知らない読者の心には響かないかもしれません。

読者があなたに期待しているものは何か、読者はどんなことに興味があるのか、読者はどんな悩みを抱えているのかなど、読者のことを理解してストーリーを作ってください。

2つ目のポイントは、読者があなたをどのように見ているのか(先入観)を考慮するということです。例えば、あなたのアイデアが素晴らしかったとしても、あなたが理想主義者のように見えたら読者からは信用してもらえないでしょう。あなたは自分がアイデアを実現できる能力があることを現実的な方法で示す必要があります。もし、あなたが未経験者で頼りなく見えるのであれば、あなたの協力者の中に経験豊富な人物がいることをアピールした方が良いかもしれません。

自分の弱点を知り、弱点に対する補完を示すことは、読者の信用を得る上で重要なポイントです。

3.VAKに訴える

ヒトは、物事を理解したり思考する時に5つの感覚(視覚、聴覚、身体感覚、味覚、臭覚)を使います。そして、それらの5つの感覚をフル活用することにより、記憶力、イメージ力、認識力、共感力が高まると言われています。心理学の世界では、人によってどの感覚を強く感じるかに違いがあると言われており、視覚(Visual)優位タイプ、聴覚(Auditory)優位タイプ、体感覚(Kinestic)優位タイプの3つに分類することができます(これをVAKモデルと言います)。下の表はタイプの違いによる効果的なコミュニケーション方法の違いを表したものです。

タイプ 最も相性の良い情報伝達方法
視覚
Visual
写真やグラフ、チャートなどを用いて情報を視覚化
聴覚
Auditory
人の声や音楽などを用いて情報を聴覚化
体感覚
Kinestic
デモンストレーションやボディランゲージなどを用いて情報を体験化

米国の大学の研究によると、多感覚体験のあるストーリーは、読者にあたかも自分の実体験であるかのように感じさせるチカラがあるとされています。つまり、多くの読者をストーリーに引き付けるには、これらの全ての感覚に訴える要素をストーリーに加えることが重要であるということです。

例として下の動画を見てみましょう。

如何でしょうか?彼らが自転車に乗っている時の感情や感覚がよく伝わってきたのではないでしょうか?今回は動画の例でご紹介しましたが、ストーリーを作る時にはVAKの観点で自分のストーリーをチェックしてみてください。ストーリーの中で使用している画像が読者の感覚を刺激しているか、動画を使用してストーリーをもっと感覚的に伝えることはできないか、などいろいろ検討できるはずです。

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+α.衝突を描く

上記3つのポイントに加えて、もう一つだけポイントをご紹介します。それは”衝突”を描くということです。ここで言う”衝突”とは、あなたのストーリーのキャラクターが悪戦苦闘し、解決しようと立ち向かっている問題のことを表します。そして、この衝突はストーリーにおいて大きな役割を果たします。

その役割とは、読者がストーリーのキャラクターに深く感情移入するということです。おそらく読者の多くは、自分の日常生活においてストーリーに出てくる衝突を体験したことはないでしょう。しかし、ストーリーのキャラクターが、立ちはだかる問題に悪戦苦闘しながらも果敢に挑戦する姿は、読者自身が経験した過去の衝突体験の記憶を呼び覚まし、ストーリーのキャラクターに深く感情移入させる効果を発揮します。

この衝突は、ストーリーの典型的なパターンの一つとされる「hero’s journey」でも必ず登場する要素です。分かりやすい例を挙げると、ジブリアニメの「魔女の宅急便」などがあります。主人公が困難に直面しながらも、何とか解決しようと努力し成長していく姿に共感を覚えた方は多いのではないでしょうか。

最後に

冒頭で触れたようにクラウドファンディングは単なるセールスの場ではありません。もちろんお金を得ることは大切な目的でしょう。しかし、もっと大切なことは、あなたのミッションを応援してくれるコミュニティを育むということです。セールストークでモノを売るのではなく、ストーリーで体験を売ってください。そうすればきっとあなたの本当のゴールに近づくはずです。