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失敗しないクラウドファンディングのリターン設計とは

ドリームレイジングCAFEのマスターです

クラウドファンディングで資金集めの成功を左右する要因の一つがリターンです。リターンとは、出資してくれた支援者への対価として提供する商品やサービスのことで、アーティストであれば自分のCDなどがそれに当たります(購入型クラウドファンディングは、支援者がプロジェクト実行者から商品等を購入し、その対価として資金を提供する仕組みでネット上の売買取引と同じ扱いになります)。

リターンの中身や金額、種類によって集まる資金の額が大きく変わってくるため、リターンの設計は慎重に行う必要があります。そこで今回は、リターン設計に失敗しないためにリターン設計のポイントについてご紹介したいと思います。

予算に関する基本事項

リターンの設計に入る前に予算に関する基本事項を確認しておきましょう。

クラウドファンディングに掛かる費用

クラウドファンディングを開始する場合、プロジェクトの掲載は無料ですが、通常以下の費用が発生します。

  • プラットフォーム手数料:プロジェクトが資金調達に成功した場合にクラウドファンディングサービス事業者に支払う手数料です。この中には支援者がオンライン決済した際の手数料も含まれます。調達した資金の10%~20%となるのが一般的です。
  • リターン製作費:支援者に提供するリターンを製作するために掛かる費用です。
  • リターン配送料:支援者にリターンを配送するために掛かる費用です。
  • プロジェクト実行費用:掛かる費用の内容はプロジェクトによって異なりますが、クラウドファンディングで募った資金を使ってプロジェクトを実際に実行するための費用です。
  • 税金:消費税の他に、調達した資金額からリターン製作のために掛かった費用やプロジェクト実行費用などを差し引いて余剰金が発生した場合は収益となり、その収益(課税所得)に法人税(法人の場合)または所得税(個人の場合)が掛かります(※)。

※購入型クラウドファンディングによる資金調達は売買取引に該当するため、税務でも前受による販売と同じ扱いになります。資金を受け取った時点では「前受金」として処理し、売上には計上しません。製品などが完成し、支援者に渡された時点で前受金を売上に計上します。

消費税の取り扱い

購入型クラウドファンディングによる資金調達とリターンの提供は消費税がかかる対象の取引となります。したがって資金の受け手が消費税の課税事業者に該当する場合は、購入型クラウドファンディングによって集めた資金の消費税相当額と使った費用の差額を納税する必要があります。

リターン設計のポイント

ポイント1.リサーチする

類似の成功プロジェクトを10~15個ほど探してリターンを分析しましょう。以下のような点をチェックしてまとめておくと、リターンを考える上での有益な情報になります。

  • 何種類のリターンを用意しているのか?
  • リターンの価格帯および集めた支援者の数は?
  • リターンの中身は?

ポイント2.7~10種類のリターンを用意する

米国の調査会社によるレポートでは、豊富な種類のリターンを提供しているプロジェクトは支援を集めやすく、その目安は7種類以上という結果が出ています。また、リターンの種類が多過ぎるとユーザーを混乱させてしまい逆効果になる恐れがあるため、最大でも10種類以下に収めることが推奨されています。

リターンの価格は1,000円、1,500円、2,000円…のように小刻みに用意よりも、1,000円、3,000円、5,000円…のように適度に差をつけて用意した方がリターンの違いが明確になりユーザーが選択しやすくなります。

ポイント3.少額のリターンを用意する

500円~1,000円程度の少額リターンはライトユーザーの支援を集める方法として効果的です。このリターンで得られる資金が全体に占める割合は僅かなものかもしれませんが、支援者を数多く集めるということは金額以上の価値があります。なぜなら、支援者の数はプロジェクトの信頼感を判断する上でのバロメーターとなり、多くの支援者を集めているプロジェクトほどユーザーが安心して支援できるからです。

ポイント4.3,000円~5,000円のリターンを用意する

3,000円~5,000円のリターンは支援者が躊躇せずに払える金額で、一般的に支援が最も集まり易いボリュームゾーンです。この価格帯に魅力的なリターンを用意して、支援者を多く獲得できるようにしましょう。

ポイント5.限定リターンを用意する

プロジェクト開始直後の数日間は、PR活動により集めた友人や知人、ファンなど数多くのユーザーが訪れる期間であり、支援を集める最大のチャンスです。成功プロジェクトの多くは、この期間で支援者を集めてソーシャルメディアなどでの情報拡散、さらなる支援者の獲得に成功しています。

そこで、多くの支援を集める方法として有効なのが限定リターンです。限定リターンとは、特別なリターンを数量限定または期間限定で提供する方法です。通常5,000円のリターンを3,000円のリターンとして数量限定で提供したり、48時間以内にお申し込みした場合は特別アイテムを追加するなど限定感をアピールして効果的に支援者を獲得できるようにしましょう。

ポイント6.”まとめ買い”リターンを用意する

“まとめ買い”リターンとは、通常1セットのリターンとは別に複数セットをまとめたリターンをディスカウントして提供する方法です(例:3,000円のリターンとは別に2セット分6,000円を5,000円のリターンとして提供する等)。プレゼント用、友達との共同購入用、小売店用などニーズに合わせたリターンを用意すると良いでしょう。

ポイント7.モノではなく体験を提供する

体験を提供するリターンは人気のあるリターンの一つです。食事会やパーティーへの招待、バックステージへの招待、オンラインレッスンなど特別な体験を提供してみましょう。支援者と直接交流できる体験は、支援者との”つながり”を深める良いキッカケにもなるでしょう。

ポイント8.適性価格で提供する

あなたのアイデアが多くの人から共感を得られたとしても、リターンの価格に満足感がなければ支援を得られません。リターンの内容と価格が釣り合うようにしましょう。また、リターンのお得感が強ければ強いほどインセンティブ効果が高くなり、支援を集めやすくなります。一般小売価格より低い価格で提供することを検討してください。

リターンの参考例

リターンは製品やサービスを提供するだけでなく、アイデア次第でより魅力的なものにすることができます。ここでは、リターンの例をジャンル別にいくつかご紹介します。

プロダクト

  • プロトタイプ版を先行して提供する。
  • 製品の機能を拡張するための関連アクセサリー類を提供する。
  • 製品のカラーや材質、サイズなど限定版を提供する。
  • 製品に支援者の名前を刻印する。
  • 創業者や開発者との会食に招待する。
  • 製品の開発現場に招待する。
  • 製品の完成パーティーに招待する。

フード

  • お店の壁に支援者の名前が入ったネームプレートを取り付ける。
  • オープン記念パーティーへ招待する。
  • オフィスにケータリングする。
  • 料理の個人レッスンを行う。
  • お店の新メニューのネーミング権を提供する。
  • 支援者のリクエストに応じたオリジナルメニューを作成する。
  • 支援者のイベントに出張して料理を振る舞う。

音楽

  • 一般公開する前のデジタル音源やミュージックビデオの先行提供する。
  • CDやFacebookのカバー写真に支援者のクレジットを入れる。
  • 支援者がリクエストした曲のカバーを録音して提供する。
  • Skypeを使って歌や楽器の個人レッスンを行う。
  • コンサートやレコーディングスタジオに招待する。支援者がコーラスやバンドメンバーとして参加する。
  • 支援者のためのプライベートコンサートを開く。
  • 支援者のためにオリジナルソングを作る。

本・雑誌・コミック

  • 全ページフルカラーの限定版を提供する。
  • これまでに出版した本のデジタル書籍を提供する。
  • 非売品のポスターやアートワーク、Tシャツなどを提供する。
  • 作品に支援者のクレジットを入れる。
  • ドラフト版の原稿やキャラクター設定など製作資料のコピーを提供する。
  • 作中に支援者の名前にちなんだ登場人物を入れる。
  • 作品の完成パーティーや作者との会食に招待する。

映画・アニメ

  • ポスターやサウンドトラック、Tシャツを提供する。
  • 台本や映画で使用した小物などを提供する。
  • エンドロールに支援者のクレジットを入れる。
  • プレミアム試写会にVIP招待する。
  • 撮影・製作現場に招待する。
  • 支援者のリクエストに応じて出演者のビデオメッセージを収録する。
  • 映画への特別出演。

ワンポイントアドバイス

ここまでリターンのポイントや参考例を見てきましたが、良いリターンとは一体どういうものなのでしょうか?それは以下のような条件を満たしたものであると言えるでしょう。

  • 支援者にとって明らかにインセンティブになるもの
  • 支援者とあなたとの”つながり”をより一歩進んだものにしてくれるもの
  • 取って付けたようなものではなく、プロジェクトの内容に沿ったもの
  • 独自性があるもの
  • 人々の話題になりシェアされるもの

以下にリターンの事例をいくつかご紹介します。

Case1. 赤ちゃんヤギの命名権がもらえる

このリターンはオーガニック野菜の栽培を手掛けるポプラウッドファームが新しい納屋を建てるためプロジェクトで提供したリターンです。支援者には赤ちゃんヤギの成長記録をメールで届けるようになっており、支援者との”つながり”を育む一助となっています。

Case2. オリジナルメニューのオーナーになれる

このリターンはヘルシーなメニューを提供するスリー・スクープ・カフェが新しいメニューの作成や店舗改築のためのプロジェクトで提供したリターンです。支援者は200種類以上あるフレーバーから自由に組み合わせることができ、出来あがったメニューは支援者にちなんだ名前が付けられて1シーズンお店のメニューとして提供されます。支援者にとってインセンティブの高いリターンとなっています。

Case3. いつでも質問に答えてもらえる

このリターンはビデオゲームの話題を中心としたオンライン漫画のペニーアーケードが公式サイトの運営費用を集めるためのプロジェクトで提供したリターンです。支援者はペニーアーケードのTwitter公式アカウントに対して、1年中好きな時に質問をすることが出来ます。お金を掛けずに、支援者にとっても楽しいリターンとなっています。

Case4. 映画に出演できる

このリターンは短編映画のSTORYLINEが映画制作資金を集めるためのプロジェクトで提供したリターンです。支援者はオリジナルテーマ曲の収録にゲストボーカルとして参加できるだけでなく、脇役として映画に出演することができます。ユニークなリターンがメディアなどで取り上げられ、映画のプロモーションにも一役買っています。

最後に

支援者は、あなたの夢や情熱を応援するためにお金を出します。そこには「善意のお金」という意味も含まれているかもしれません。しかし、「善意のお金」=「寄付」というわけではありません。あなたが支援者の立場になってみて、本当にそのリターンをもらって嬉しいか・ワクワクするかを考えてリターンを設計してください。