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クラウドファンディングのストレッチゴール完全ガイド

ドリームレイジングカフェのマスターです

クラウドファンディングのプロジェクトの中には、目標金額の数倍~数十倍の金額を集めるものも少なくありません。なぜ、それだけの金額を集めることが出来たのでしょうか?その答えの一つが「ストレッチゴール」です。ストレッチゴールは支援者のモチベーションを高め、プロジェクトを盛り上げる大きな役割を果たします。そこで今回は、このストレッチゴールについて解説してみたいと思います。

ストレッチゴールとは

ストレッチゴールとは、プロジェクトの目標金額を達成した場合に追加で設定される第2、第3の目標金額のことです。一般的にはあなたの製品やサービスをもっと良いものにするために必要な金額を目標金額として設定します。例えば、あなたがミュージシャンでアルバム制作にチャレンジする場合、「80万円達成でアルバム制作」「100万円達成でアルバムに未発表曲を3曲追加」「150万円達成でミュージックビデオを制作」というように段階的に目標金額を設定することが出来ます。

ストレッチゴールの例

ストレッチゴールの目的

では、一体何のためにストレッチゴールを設定するのでしょう。主な目的として以下の3つが挙げられます。

1.より多くの支援者を集める

クラウドファンディングは資金調達だけでなく、プロモーションやファン獲得の絶好の機会でもあります。クラウドファンディングに挑戦される方の誰しもが出来る限り多くの支援者を集めたいと思うことでしょう。しかし、プロジェクトが目標金額を達成してしまうと、多くの人はそのプロジェクトに対して支援する必要性を感じなくなり、あまり関心を持ってくれません。そのような場合、ストレッチゴールを設定して次の目標に挑戦していることをアピールすることにより、まだ支援していない人たちの関心を高めることができます。

2.プロジェクトの勢いを持続する

プロジェクトの勢いを持続するには、既に支援した人達に関心を持ち続けてもらうことが重要です。しかし、支援者は目標金額を達成するまでは、ソーシャルメディアでシェアするなどいろいろと応援してくれますが、目標金額を達成してしまうとそれで満足してしまい、次第に関心が薄れてしまいます。そのような場合、ストレッチゴールを設定することにより、再び支援者の関心を高めることができます。支援者は次の目標金額達成のために追加で支援したり、ソーシャルメディアでシェアするなど、様々な面でプロジェクトを盛り上げてくれるでしょう。また、話題性のあるストレッチゴールはメディアの関心を集めることにもつながります。

3.目標は高く持ちつつも、ハードルを低くする

もし、あなたが小説を作りたいという夢を持っているのなら、おそらく表紙やカバー、ページのデザインなど、いろいろこだわって作りたいと考えるでしょう。しかし、それら全てを実現しようとすると目標金額を高く設定する必要があり、プロジェクトの成功を難しくしてしまいます。せっかく残り数%のところまで支援を集めたとしても、目標金額を達成できなければ1円も調達することはできませんので、プロジェクトが振り出しに戻ってしまいます。

そのような場合、第1目標は電子書籍を出版、第2目標はきれいに装丁した製本版を出版、第3目標はイラストレーターによる挿絵を追加などストレッチゴールを設定することで、最終的な目標は高く持ちつつも、一番の目標である小説を作るという夢は実現しやすくなります。

ストレッチゴールの種類

次にストレッチゴールの種類を見てみましょう。主な種類として以下の3つが挙げられます。

1.ストレート型ストレッチゴール

このタイプは、製品の主要部分の拡張・改善など、全ての支援者に対してメリットがあるストレッチゴールを表します。例えば、ゲーム製作のプロジェクトで、ゲームに新しい機能やキャラクター、ステージを追加することなどが挙げられます。これから支援する人だけでなく、既に支援した人たちにとってもメリットがあるため、プロジェクトを盛り上げる効果は高くなります。

ストレート型ストレッチゴール=質を高める

2.セグメントテッド型ストレッチゴール

このタイプは、オプション機能の追加など、一部の支援者に対してメリットがあるストレッチゴールを表します。例えば、PC版のゲームにAndroid版やiOS版を追加することなどが挙げられます。これから支援する人にはメリットがありますが、既に支援した人たちの大半はメリットがないため、プロジェクトを盛り上げる効果はストレート型に比べると低くなります。

セグメントテッド型ストレッチゴール=オプションを増やす

3.リターン追加型ストレッチゴール

このタイプは、新しいリターンを追加したり、既存のリターンに特典を追加するなど、全ての支援者もしくは一部の支援者に対してメリットがあるストレッチゴールを表します。例えば、クラウドファンディング限定グッズを製作して新しいリターンを追加したり、既存のリターンにノベルティを特典としてプラスするなどが挙げられます。どんなプロジェクトにも容易に取り入れられることから、ストレッチゴールで最もよく使われるタイプです。

リターン追加型ストレッチゴール=リターンを追加する

ストレッチゴールの告知方法

ストレッチゴールをいつ・どのように告知するかは難しい問題です。残念ながら最適解というものはありませんが、ここでは代表的な3つの方法をご紹介します。

1.目標を達成するごとに次のゴールを告知する

これは、最初は全てのゴールをシークレットにしておき、目標を達成するごとに次のゴールをオープンにしていく方法です。この方法のメリットとしては、当初計画していたゴールをプロジェクトの反響を見ながら変更できるという点が挙げられます。また、目標が達成されて次のゴールがオープンになった時のワクワク感を演出することができます。

目標達成で次のゴールをオープン

2.最初から全てのストレッチゴールと設定金額を告知する

これは、最初から全てのゴールとその設定金額をオープンにする方法です。この方法のメリットとしては、ゴールの全体像を見せることで支援者のモチベーションを一気に引き上げ、SNSでのシェア促進などプロジェクトに勢いをもたらすことができるという点が挙げられます。

初めからゴールを全部オープン

3.最初に複数のゴールを告知するが、設定金額は告知しない

これは1番と2番をミックスしたような形で、最初は全てのゴールのうちのいくつかをオープンにしておきつつも、設定金額はシークレットのままにしておき、徐々にオープンにしていくという方法です。この方法のメリットとしては、予めゴールの内容をちょっとだけ見せておくことで支援者のモチベーションを高め、SNSでのシェア促進などプロジェクトに勢いをもたらす効果が期待できるという点が挙げられます。また、状況に応じて設定金額を自由に変更することができます(例:残り日数が少なくて達成の可能性が低い場合は設定金額を下げて支援を促す)。

ゴールの内容はオープンにするが金額はシークレット

ワンポイントアドバイス

ストレッチゴールに設定できるのは金額だけではありません。その他にもいろいろなものをストレッチゴールに設定することができます。いくつかアイデアをご紹介しましょう。

支援者の数
50人達成でリターンにアイテムを追加、100人達成でリターンをアップグレードのように支援者の数をストレッチゴールに設定することができます。特に、お金と同様に人を集めることも重要なプロジェクト(イベント、ライブ開催など)でオススメです。

Facebookの「いいね」や「シェア」の数
プロジェクトページにはFacebookの「いいね」ボタンや「シェア」ボタンが付いていますので、それをストレッチゴールに設定することができます。お金を出さなくても誰でも参加できるため、情報を拡散させてプロジェクトの認知を広めたい場合に使用すると良いでしょう。

Twitterのフォロワー数
Twitterのアカウントを持っているのであれば、フォロワー数をストレッチゴールに設定することができます。プロジェクトをプロモーションする際にTwitterは非常に重要な役割を担います。フォロワー数を増やして情報発信力を高めたいという場合に使用すると良いでしょう。

Facebookの投稿数やTwitterのツイート数
ユーザーにハッシュタグや名前(あなたのアカウント名)を付けてFacebookやTwitterに投稿してもらい、その投稿数をストレッチゴールに設定することができます。例えば、あなたが地域おこしに関するプロジェクトをしているとしたら、ユーザーにその地域の景色や思い出を写真に撮ってハッシュタグ付きで投稿してもらうといった使い方ができます。この方法は「いいね」や「シェア」以上にユーザーとの関係を深めることができ、プロジェクトの勢いを持続する上で大きな効果を発揮するでしょう。

ノルマ
予めノルマを複数用意しておき、そのうちのいくつをクリアしたら目標達成という風にストレッチゴールを設定することができます。例えば、
①支援者20人到達
②支援者50人到達
③支援者80人到達
④支援額30万円到達
⑤支援額50万円到達
⑥支援額80万円到達
⑦いいね数100到達
⑧いいね数250到達
⑨いいね数500到達
⑩フォロワー数100到達
⑪フォロワー数200到達
⑫フォロワー数300到達
といくつかノルマを用意しておき、このうち3つクリアしたら第1ゴール、5つクリアしたら第2ゴールとすることができます。ややシステムは複雑になりますが、その分ゲーム性が高くなるためプロジェクトを盛り上げる効果が期待できます。

タイマー
ちょっと変わった方法ですが、指定した時間内に条件をクリアしたら目標達成というストレッチゴールを設定することができます。例えば、プロジェクトスタート48時間以内に支援者が50人に達したらリターンにアイテムを追加とか、プロジェクト終了48時間前から終了までに支援者が20人増えたらリターンにアイテムを追加というような使い方ができます。プロジェクトに瞬間的な勢いを与えたい場合に使用すると良いでしょう。

ストレッチゴールの注意点

一見すると便利でメリットが大きいストレッチゴールですが、注意すべき点もいくつかあります。

1.オリジナルのアイデアを向上させることにフォーカスすること

ストレッチゴールでしばしば見受けられるケースが本来のアイデアの趣旨から外れて、全く別のアイデアを実現しようとすることです。例えば、ミュージシャンの例で言うと、CDアルバム制作が目的であるにもかかわらず、オリジナルTシャツなどグッズ製作をストレッチゴールに設定するといったことが挙げられます。

もちろんあなたの熱心なファンならそれを支援してくれるでしょう。しかし、そうでない人達にとっては魅力のないゴールと映ってしまい、期待した効果は得られません。支援者がなぜあなたを支援したのかをしっかりと理解し、まずはあなたのアイデアを向上させることを最優先にしてストレッチゴールを考えた方が良いでしょう。

2.プロジェクトに遅延が発生しないようにすること

クラウドファンディングでよくあるトラブルがプロジェクトの遅延です。遅延の理由は様々ですがストレッチゴールが関係していることも少なくありません。例えば、米国Kickstarterでクラウドファンディングに挑戦した小型ドローン「ZANO」のケースでは、ストレッチゴールを利用して目標金額を大幅に上回る調達に成功したにも関わらず、製品出荷の延期が繰り返され、最終的には会社清算という事態にまで発展してしまいました。

その理由として、過度にストレッチゴールを設定してしまい、その機能をすべて追加することになったうえに、生産台数も大幅に増えたことで、開発と生産が遅れたことが挙げられます。そして出荷の遅れを避けようと、十分なテスト生産を行わない状態で大量生産に踏み切ったことが事態を悪化させてしまいました。

このようにストレッチゴールが支援者にとって価値があることだったとしても、それによってプロジェクトが遅延することは避けなければなりません。支援者がいつまでたってもリターンを受け取れないという事態は、あなたの評判を大きく傷つけ、しいてはあなたのビジネスに大きな損失を与えることになるでしょう。クラウドファンディングではリターンをスケジュール通りに届けることが非常に重要です。無理のない現実的な範囲でストレッチゴールを設定してください。

3.支援者に不満・不公平感を与えないこと

ストレッチゴールは一見するとみんながwin-winになるように見えますが、実際はそうではありません。例えば、ゲーム製作のプロジェクトでは実に多種多様な追加機能・追加仕様をストレッチゴールとして設定しているケースをよく見かけます。それらに魅力を感じて新たに支援する人も多くいるでしょう。しかし、一方でそれらの追加によって初期のコンセプトが大きく変わってしまうことを好まない支援者も存在する可能性があります。また、ストレッチゴールを達成できなければ、それを目当てに支援した人達は大きな失望を抱くかもしれません。

その他のケースとして、ストレッチゴールとしてリターンの追加や一部変更を行う場合も注意が必要です。後から追加されたリターンの方が魅力的で、早めに支援して損をしたと感じる支援者もいるでしょうし、一部のリターンだけグレードアップしたら、それに漏れた支援者は当然不満に感じるでしょう。

ストレッチゴールを設定する場合は、これから支援する人、すでに支援した人の双方に配慮しながら慎重に行ってください。

ストレッチゴールの事例集

では、実際にどのようなストレッチゴールがあるのか事例をいくつか見てみましょう。

電動自転車「FLX 」

「FLX」は軽量かつパワフルな電動自転車です。クラウドファンディングで170万ドル以上を集め、目標金額の3197%を達成しています。このプロジェクトではストレッチゴールを採用しており、内容は下図のようになっています。

10万ドルごとにゴールを設け、ゴールをクリアしたら自転車をグレードアップするためのパーツを特別価格で提供するという仕組みになっています。自転車を購入した人は少なからずとも自分仕様にカスタマイズしたくなるものです。話題性があるようなユニークなものはありませんが、支援者にとってはうれしいゴール設定になっているのではないでしょうか。

映画「Lazer Team」

「Lazer Team」はRooster Teethという制作会社が初めて作る長編映画です。クラウドファンディングで映画製作資金を募集し、248万ドル以上を集めて目標金額の382%を達成しています。このプロジェクトでもストレッチゴールを採用しており、内容は以下のようになっています。

  • $650,000クリア:映画製作決定+撮影台本のPDFをプレゼント
  • $750,000クリア:映画から派生した6つのショートストーリーを作成してサイト上で公開
  • $1,000,000クリア:25ドル以上のコースを支援した全ての支援者にコンセプトアートをプレゼント+撮影スタジオのツアービデオ製作
  • $1,250,000クリア:ゲーム実況番組を1ヶ月間毎日公開
  • $1,375,000クリア:映画の音楽をオーケストラ演奏にグレードアップ+リターンにレコーディング見学を追加
  • $1,500,000クリア:海外で上映
  • $1,625,000クリア:テレビや映画について討論する特別番組を製作
  • $1,750,000クリア:映画のVFX(ビジュアル・エフェクツ)をアップグレード+製作の裏側を短編ドキュメンタリー化
  • $1,875,000クリア:低予算・特殊効果なしの短編パロディ映画を製作

音楽やVFXのアップグレードのように作品の質を向上させるゴールの合間に、なるべくお金を掛けずに支援者に喜んでもらえそうなゴールを差し込み、少しでもプロジェクトを盛り上げようと工夫している様子が伺えます。支援者へのお礼としてモノで返すのではなく、番組製作のように体験で返すというのは制作会社ならではの非常に良いアイデアではないでしょうか。

コワーキングスペース「Gaza Sky Geeks」

「GazaSkyGeeks」はパレスチナ自治区のガザで唯一のスタートアップアクセラレーターで、若い起業家のためのコワーキングスペースを運営しています。クラウドファンディングで運営資金を募集し、26万ドル以上を集めて目標金額の380%を達成しています。このプロジェクトでもストレッチゴールを採用しており、内容は以下のようになっています。

  • $70,000クリア:施設の維持費
  • $150,000クリア:スタッフ半分の人件費+スタートアップ・プログラムの拡充
  • $250,000クリア:スタッフ全員の人件費+スタートアップ・イベントの開催
  • $500,000クリア:1年間完全な状態で運営するための運営資金
  • $1,500,000クリア:3年間完全な状態で運営するためのの運営資金

必要な資金をストレッチゴールを使って適切に段階分けしています。何にどれくらいの資金を必要としているのかが一目で分かるため、「第1目標は達成しているけど、もっと支援してあげよう」という気持ちにさせてくれます。もし、あなたのプロジェクトが当初の目標を達成できたとしても、将来的にもっと資金が必要であるのなら、このようにストレッチゴールを使用して、さらに支援が必要なことを分かりやすく明示してください。

ポテトサラダ

ポテトサラダ
出典:Potato Salad

これはジョークのような本当にあったプロジェクトですが、一人の男性がポテトサラダを作るための資金をクラウドファンディングで募集したプロジェクトです。6900人の支援者から5.5万ドルの資金を集めることに成功しています。このプロジェクトでもストレッチゴールを採用しており、内容は以下のようになっています。

  • $35クリア:ポテトの量を4倍にアップ
  • $75クリア:宅配ピザも頼んで自宅でピザパーティー
  • $100クリア:2種類のレシピでポテトサラダを作る
  • $250クリア:もっと良い自然食品のマヨネーズを使用する
  • $300クリア:電話でシェフに美味しいポテトサラダの作り方を教えてもらう
  • $350クリア:ポテトサラダのレシピをもっと進化させる
  • $1,000クリア:ポテトサラダを作る様子をLive配信する
  • $1,200クリア:全ての支援者に対してお礼のビデオおくる(ビデオ制作費)
  • $3,000クリア:ポテトサラダパーティーを開催(会場レンタル費)

決して大袈裟ではない程良い加減のゴール設定が、面白そうだしちょっと支援してみようかなという気持ちにさせてくれます。また、このプロジェクトでは複数回に分けてゴールを徐々にオープンにしたことも支援者の期待値を高める要因の一つになったのではないかと思われます。ストレッチゴールの例としては少々極端ではありますが、ストレッチゴールを活用してプロジェクトを盛り上げることに成功した事例の一つではないでしょうか。

ちなみにポテトサラダパーティーは実際に開催され、約200kgのポテトを使用、1500~2000人にポテトサラダが振る舞われたそうです(笑)

最後に

これまでに述べてきたようにストレッチゴールはより多くの支援を集める上で非常に有効な方法です。しかし、一方で安易なゴール設定はプロジェクトの遅延、支援者とのトラブルといった弊害を引き起こす可能性もはらんでいます。お金は使えば消えてなくなってしまうものですが、支援者との関係はずっと続いていくあなたの大切な財産です。ストレッチゴールを利用する場合は、プロジェクトスタート前からしっかりと計画を立てておくようにしてください。