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クラウドファンディングで”地域おこし”!?クラウドファンディンが果たす役割とは

近年、地方創生の取り組みが大きな盛り上がりを見せています。身近なところで言うと、応援したい都道府県や市区町村に寄付できる「ふるさと納税」が挙げられますが、別の取り組みとして今注目を集めているのが「クラウドファンディング」です。

2014年に内閣府地方創生推進室によって「ふるさと投資」連絡会議が設置され、地方公共団体や地域金融機関がクラウドファンディング事業者と連携して地域に根付いた事業をサポートする取り組みを推進しています。既に日本全国の地方公共団体でクラウドファンディングの活用が始まっており、地場産業の振興や街づくりを目的とした様々なプロジェクトが誕生しています。

<クラウドファンディングの活用事例>

■特産物、地場産業、地域資源などの地域の魅力を発信

  • 幻の果実 ポポーをみんなに食べてもらいたい!(島根県美郷町)
  • 黑壁ガラス工房ファンド(滋賀県⻑浜市)
  • ⻄粟倉村共有の森ファンド(岡山県⻄粟倉村)

■地場産業を担う企業の再生や事業継続を支援

  • 現代サラリーマンの甲冑!真田幸村スーツで大阪の縫製業界を盛り上げたい!(大阪市)
  • つばさグリーンファー深谷ねぎファンド(埼玉県深谷市)
  • 風で織るタオルファンド(愛媛県今治市)

■地域の魅力を発信する拠点を整備

  • 飛騨高山に、コワーキングスペースをつくります!(岐阜県高山市)
  • 鳥取をもっと楽しくするコミュニティーハウスをつくりたい!(鳥取県八頭町)
  • 古い劇場跡を改修し、人が集い文化に触れる場所にしたい!(和歌山県串本町)

■地域に人を呼び込む仕組みづくりや拠点等を整備

  • 「かまくら想い」プロジェクト始動!(神奈川県鎌倉市)
  • 大田原グリーン・ツーリズムファンド(栃木県大田原市)
  • 明日香村古⺠家活用おもてなしファンド(奈良県明日香村)

■地域のにぎわい創出に活用

  • ソダッテ阪神沿線 新在家編(兵庫県神戶市)

■災害復旧・復興での活用

  • 広島市豪雨災害・緊急支援プロジェクト(広島市)
  • ベガルタ仙台 被災地の人々1,000人を試合へ招待したい!(仙台市)

■再生可能エネルギー設備の整備に活用

  • 市⺠風車ファンド2014石狩厚田(北海道石狩市)
  • くまもと県⺠発電所 幸せファンド(熊本県南関町)

ご覧のように実に様々な目的で利用されているのがお分かりになるかと思います。そこで今回は、クラウドファンディングを活用した”地域おこし”について取り上げてみたいと思います。

まち・ひと・しごとの創生とクラウドファンディング

近年「地方創生」という言葉をよく耳にしますが、日本政府が地方創生本部を設置して推進しているのが「まち・ひと・しごとの創生」です。

『「しごと」が「ひと」を呼び、「ひと」が「しごと」を呼び込む好循環を確立するとともに、その好循環を支える「まち」に活力を取り戻す。』

という基本方針のもと様々な取り組みが始まっており、その中の一つとしてクローズアップされているのがクラウドファンディングです。クラウドファンディングを活用することにより、地域に根ざした資源や多様な価値観を取り込んだ付加価値の高い製品やサービスの創出を促し、そこから「まち・ひと・しごと」の好循環へとつなげていくということが期待されています。

「しごとの創生」とクラウドファンディング

地域へのヒトの流れを生み出すには安定して働き・暮らすことができる基盤が必要です。つまり、「新規事業の創出」や「既存事業の拡大」を促し、新しい雇用を創出する必要があります。クラウドファンディングはものづくり産業や農林水産業、観光産業、サービス産業、コンテンツ産業など幅広い分野で活用でき、技術と意欲を持ったベンチャー企業や中小企業の新たな活躍の場を提供する役割を担います。

「ひとの創生」とクラウドファンディング

地域を担う多様な人材の確保・育成・定着は地域活性化の原動力となります。クラウドファンディングは若者、女性、シニアなど年齢、キャリアを問わず誰もが活躍できるフィールドを提供するとともに、地域に密着した活動を通して愛郷心を育み、人材の定着を促進する役割を担います。

「まちの創生」とクラウドファンディング

地域の持続的な発展には、民間主導・市民参加型の事業創出を促進することが重要です。誰でも自由に資金調達できるクラウドファンディングは、まちづくりや文化・産業振興など幅広い分野で地元企業や民間団体の事業参画を活発にする効果が期待できます。また、インターネットを通じて情報発信することで地域の人々の事業に対する理解を深め、地域全体で事業を盛り上げるキッカケづくりになる効果も期待できます。

クラウドファンディング活用の意義・メリット

クラウドファンディングは地方創生の一つの方法として多くの地方公共団体で活用されることが期待されていますが、クラウドファンディングの活用には具体的にどのような意義・メリットがあるのでしょうか?支援者・プロジェクトを実施する事業者・地方公共団体の3者の観点で見てみましょう。

支援者から見た意義・メリット

一番分かり易いメリットとしては支援額に応じたリターンを得られることが挙げられますが、それ以外にも以下のような意義・メリットが考えられます。

■地域貢献できる

頑張っている地元企業や団体を直接支援することで、地域の一員として地域社会に貢献できる喜びを得ることができます。また、支援した企業や団体の活動に自らも積極的に関わることで、新しい発見や体験を得ることができます。

事業者から見た意義・メリット

営利・非営利に関わらす様々な事業で自由に資金調達できることが大きなメリットですが、それ以外にも以下のような意義・メリットが考えられます。

■PRができる

インターネットを通じてプロジェクトを広くアピールすることで、地域の人々に関心を持ってもらうことができます。また、社会貢献度の高い事業にはニュース性があることから、パブリシティを上手く展開すれば、大きな広報効果が期待できます。

■テストマーケティングができる

どれくらいの賛同・支援を得られるかを見ることによって、事業の市場ニーズの高さ、社会的意義の大きさを検証することができます。ここで得られた結果をもとに事業コンセプトの見直しを行い、その後の事業展開に役立てることができます。

■顧客・ファンづくりができる

クラウドファンディングは支援を集める過程で様々な人達との交流を深めることができ、事業を長期的に支えてくれる顧客やファンを増やすことができます。

地方公共団体から見た意義・メリット

■財政負担を軽減できる

従来の補助金や助成金による支援スキームの中にクラウドファンディングを取り入れることにより、財政負担の軽減につなげることができます。

■地域の課題を解決できる

公的な支援ではカバーしきれない事業を、クラウドファンディングを活用して民間主体で展開することにより、地域の様々な課題を解決することができます。また、支援者も含めて多くの人が地域活性化に関わることになり、地域活性化の広がりが期待できます。

■地域のPRができる

クラウドファンディングは、プロジェクトを通じて地域の魅力を多くの人に発信することができ、地域の認知度向上やファンづくりの効果が期待できます。

地方公共団体に求められる役割

クラウドファンディングを地域活性化に効果的に活用するには、事業者や地域住人のがんばりに加えて、地方公共団体が以下のような役割を担うことが重要です。

  • クラウドファンディング普及のためのプロモーション:クラウドファンディングの存在を地域住民や団体、企業等に PRすることで、クラウドファンディングの活用に対する機運を高めることができます。具体的には住民や団体、企業を対象にしたセミナーの開催、ウェブ上で情報提供するためのポータルサイトの開設等が考えられます。
  • 事業の掘り起こし:地元商工会や地域金融機関等と連携し、プロジェクトの発掘やクラウドファンディングサービスの仲介を行うことで、クラウドファンディングの利用促進が図れます。
  • プロジェクトのPR:プロジェクトを実施する事業者の中にはPRが得意ではなく支援が思ったように集まらないというケースも少なくありません。地方公共団体が事業者と協力してウェブ上での情報発信、広報誌での紹介、地元メディアとの連携など、プロジェクトを盛り上げるために積極的にPRすることが望まれます。
  • 事業の育成:プロジェクトを実施する事業者の中には、法律・会計・税務等の知識不足、事業計画策定のノウハウ不足等の課題があって、事業が思うように進まなかったり、十分な効果を得られなかったりする場合があります。クラウドファンディングで集めた資金を有効に活用するために、こうした事業者への継続的な支援が望まれます。

クラウドファンディングを活用している地方公共団体の事例

兵庫県「キラリひょうごプロジェクト」

キラリひょうごプロジェクト

兵庫県では、県内各地域の特色を生かした中小企業者の取組みを「キラリひょうごプロジェクト」として発掘・選定し、プロジェク卜の特徴や魅力を専用ポータルサイトやセミナーで広く県内外に情報発信するとともに、クラウドファンディングによる資金調達を支援しています。

キラリひょうごプロジェクト

県が地域金融機関や商工会議所など63の協力機関と協定を締結し、案件発掘や事業計画の作成支援に当たるほか、支援対象プロジェクトを審査・選定するなど、県の産業振興施策に組み込んで実施していることが特徴です。

ビジネススキーム

県が主体となって果たす役割

  • クラウドファンディングを活用した制度設計
  • 地域ブランドとして成長を目指す優れたビジネスプランを「キラリひょうごプロジェクト」として選定
  • 専用HPで事業の魅力を県内外にPR
  • 実績・能力のある仲介事業者の選定

協力機関が主体となって果たす役割

  • 案件発掘
  • 申請に向けた相談・助言
  • 事業計画の作成支援

平成26年度の募集では9つの事業が選定され、8677万円の資金調達に成功しています。平成27年度は11つの事業が選定されており、クラウドファンディングの裾野が徐々に広がりつつあります。

<平成27年度「キラリひょうごプロジェクト」一覧>

神戸発、奇跡のやわらかローファープロジェクト 履き心地と快適さを追求し、学生の成長を足元から支えるやわらかローファーを靴の街・神戸長田から全国へ発信
世界初、濃縮天然温泉水で作る美容化粧水プロジェクト 敷地内からくみ出した天然温泉水が自慢の下町銭湯が、超音波で霧化濃縮した世界初の試みである美容化粧水の製造に挑戦
老舗寿司屋の挑戦 創作あなご寿司「近松巻」プロジェクト 創業77年の老舗寿司屋が作る、明石産穴子を使った創作寿司「近松巻」を全国へ発信
豊岡製鞄で安心・丈夫なペット用キャリーバッグプロジェクト 鞄の産地である豊岡の高い製鞄技術を用いて、デザイン性や品質・機能性を兼ね備えたペット用キャリーバッグを企画販売
国産野菜で作る手づくりのお麩プロジェクト 日本の伝統食品である「焼き麩」に国産のこだわり野菜を練り込んだ幅広いお麩製品を製造・販売
姫路駅名物まねきのえきそばプロジェクト JR姫路駅で1949年より親しまれている「えきそば」を地域ブランドとして全国発信するためのモデル店舗作り
姫路名物手作りアーモンドバタープロジェクト 姫路発祥のご当地食品「アーモンドバター」を良質の材料で丁寧に手作りし、インターネットを通じて全国へ販売
但馬の大自然を閉じ込めた手作り燻製缶詰プロジェクト 但馬地域の豊かな食材を神鍋高原の大自然で燻した燻製缶詰の販売
こだわりの餌で一貫飼育するブランド但馬牛プロジェクト 天然素材を独自配合した餌や独自の飼育方法で肥育した自社ブランド牛「但馬玄」を増産し、全国へ発信
山廃仕込純米酒25度の凍結濃縮酒プロジェクト こだわりの山廃仕込純米酒の原酒を凍結濃縮し、アルコール分25%の味わいを高めた今までにない日本酒を製造・販売
丹波産生乳で作る甘酒ミルクプロジェクト 丹波の老舗酒造が製造するノンアルコールの甘酒と丹波産生乳をブレンドした甘酒ミルクを全国へ発信

また、これらの事業者を巡りグルメを楽しむ観光ツアーが開催されるなど、クラウドファンディングの枠を越えた取り組みも出て来ています。

地域おこし協力隊 クラウドファンディング

地域おこし協力隊 クラウドファンディング

「地域おこし協力隊」は、地方の活性化と若者の定住促進を目指して総務省が2009年度から始めた制度です。2015年度は全国673自治体で2625人が活動し、隊員の70%以上を20歳~30歳代の若い世代が占めています。しかし、就業先が乏しいなどの理由で任期終了後の定住が半数ほどに留まっていることから、若者の起業を後押しするために2016年4月にスタートしたのが「地域おこし協力隊 クラウドファンディング」です。

クラウドファンディングを利用したい地方自治体は、最初に一般社団法人 移住・交流推進機構(JOIN)に加入申し込み手続きを行い、次に民間パートナーである「ふるさとチョイス」「JAPANGIVING」「Yahoo!JAPAN」「楽天」の4社のいずれかと契約を締結してプロジェクトをWebサイトに掲載する流れになります。

地域おこし協力隊 クラウドファンディングの流れ

総務省は地方自治体に対して、当該仕組みの活用に要する経費の財政措置(上限100万円)を行っており、2016年12月の段階で山形県、岡山県、高知県、愛媛県、鹿児島県の5つの自治体のプロジェクトが完了しています。

最後に

日本経済新聞社が2016年7月に47都道府県と813市区を対象にして行った調査によると、クラウドファンディングを活用または予定と回答したのは34道府県(72%)と133市区(16%)となっています。既にクラウドファンディングが全国に浸透し始めており、今後は地域密着型のクラウドファンディングがさらに活発になってくるでしょう。

従来の補助金・助成金に頼った地域活性化ではなく、民間主体で地域活性化事業を担い、行政・金融機関などが連携してしっかりとバックアップしていく。そのような持続可能な仕組みを築く上で、クラウドファンディングが果たす役割は非常に大きいのではないでしょうか。