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大学も注目するクラウドファンディング。その理由とは

クラウドファンディングというと中小企業やベンチャー企業、個人クリエイターなどが利用するイメージが強いと思いますが、近年では大学がクラウドファンディングを利用するケースも増えています。

クラウドファンディングの活用が進む海外では、米国のクラウドファンディングサービス『GoFundMe』で立ち上がった学生プロジェクトの数が2014年で10万件、支援総額が1300万ドルを突破したと言われています。また、多くの大学が自らがクラウドファンディングサイトを立ち上げて学術研究や大学スポーツなど様々な分野で資金調達を行っています。

そこで今回は、大学でのクラウドファンディングの活用について取り上げてみたいと思います。

クラウドファンディングを活用する意義

米国の大学では日本より早くクラウドファンディングの活用が始まっています。そこで、まずは大学がどのようにクラウドファンディングを利用しているのかUMBC大学が全米の大学に対して行ったアンケートの調査結果で見てみましょう。

■クラウドファンディングを利用する目的は?

下のグラフは、大学がどのような目的でクラウドファンディングを利用しているのかを表しています。「奨学金」、「学生団体の支援」、「学生アスリートの支援」のように個人や団体を支援するものから、「大学通年基金」、「学術研究の支援」、「大学図書館の運営」のように大学の運営に必要な資金の調達など様々な目的で利用されていることが分かります。

クラウドファンディングを利用する目的は?

■クラウドファンディングのターゲットは誰?

次のグラフはクラウドファンディングで誰を寄付者としてターゲットにしているかについて表したものです。不特定多数の人達を対象にする一般的なクラウドファンディングとは異なり、大学と関わりを持つ人達が中心となっていることが伺えます。

クラウドファンディングのターゲットは誰?

■クラウドファンディングの成果は?

次にクラウドファンディングを利用している大学の評価をいくつか見てみましょう。

アリゾナ州立大学

アリゾナ州立大学では2013年にクラウドファンディングプログラム「PitchFunder」を立ち上げて学生や職員の資金調達の支援をスタート。従来の大学基金には関心が低かった学生や職員が数多く寄付するなど、新しい寄付者の開拓に大きく貢献している。

クラウドファンディングを大学に導入した目的は、学生が寄付へ関心を持つキッカケになると考えたからです。そうすることで、彼らが卒業した後も様々な形で大学に貢献してくれるようになるのではないかと考えています。

(アリゾナ州立大学ディレクター Tiffany Antar)

テンプル大学

テンプル大学では2013年にクラウドファンディングプログラム「OwlCrowd」を立ち上げて学生の活動支援をスタート。新しい寄付者の開拓や既存寄付者のロイヤルティ(忠誠度)向上などに役立てている。

クラウドファンディングは、優先度がそれ程高くなく小額の資金を必要としているプロジェクトで資金を集めるために活用しています。これまで寄付に関心が低かった層にアプローチすることができ、その結果に満足しています。

(テンプル大学ディレクター Alysea Mcdonald)

コネチカット大学

コネチカット大学では学生がクラウドファンディングにチャレンジし競い合うコンテスト「ignite」を年に1回開催(期間は1週間)。現在では30を超えるグループが参加するまでに成長し、学生の慈善活動への意識向上に大きな役割を果たしている。

クラウドファンディングで最も重要視しているゴールは、学生の慈善精神を育み、慈善活動に参加してくれる学生を増やすことです。このような取り組みが卒業生の大学への貢献度を高めてくれると考えています。

(コネチカット大学ディレクター Karen LaMalva)

このようにクラウドファンディングは大学とステークホルダーとの関係を深め、寄付の裾野を拡げることに役立っていることが分かります。大学でクラウドファンディングを活用する意義をまとめると以下のようなものが挙げられるでしょう。

  • ステークホルダーに対してWeb上から気軽に少額寄付できる仕組みを提供できる
  • 卒業生に対して寄付への参加を促す
  • 学生や卒業生の愛校心を高める
  • 学生に慈善の文化を根付かせる

また、学生が立ち上げるプロジェクトの中には地域社会への貢献を目的としたものも多いため、大学と地域社会との交流を深める広報活動の役割も担っています。

日本の大学でのクラウドファンディング活用事例

次に日本の大学でのクラウドファンディングの活用について見てみましょう。米国に比べるとまだまだ数は多くありませんが、日本でも様々な事例が出てきています。

筑波大学(茨城県)

筑波大学では一般社団法人 筑波フューチャーファンディングと協働して日本初となる大学クラウドファンディングサービス「TFF(Tsukuba Future Funding)」を2015年9月にスタートし在学生や卒業生を応援する取り組みを行っています。

筑波フューチャーファンディング

この取り組みは、2014年に起業家教育の一環としてスタートしたサマーセミナー「TCC(Tsukuba Creative Camp)」に続く展開のひとつで、 ”日本のシリコンバレー”へと近づく第2歩目として期待されています。

さらに2016年にはサービス化・製品化を支援するリーディング企業6社と業務提携し、アイディアや技術があってもサービス化・製品化できなかった起業家を全面的に支援する体制を強化するなど先進的な取り組みを行っています。

筑波フューチャーファンディング・エコシステム

崇城大学(熊本県)

崇城大学ではベンチャー起業家の輩出と育成を目的として2014年に「SOJO Ventures」という大学公認の起業部を立ち上げ、大学発のベンチャー起業家の輩出と育成を行っています。SOJO Venturesでは実践的な起業家育成プログラムを展開しており、2016年9月時点で8つの起業プロジェクトが進行しています。

SOJO Ventures

同大学では前述の筑波大学とは異なり独自のクラウドファンディングサイトを立ち上げるのではなく、外部サービスの「Makuake」と提携しプロジェクトの資金調達をサポートしています。Makuakeを利用して資金調達を行った地域創生マーケティング事業では目標金額の310%を達成し話題を集めるなど大きな成果を上げています。

ごくりくまプロジェクト

山梨大学(山梨県)

山梨大学では文部科学省の採択を受けて取り組む「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COCプラス)」の一環として、山梨県内11大学および自治体、産業界、マスコミ、金融機関、労働団体などの地域機関が連携してクラウドファンディングの活用に取り組んでいます。

yamanashi-coc

同大学では2016年1月に外部サービスの「FAAVO」と提携して「FAAVOやまなし」を設置し、「やまなし未来創造教育プログラム」における地域での実践活動やオンデマンド授業コンテンツの制作などにかかる資金援助や新規事業に必要となる資金調達をサポートしています。

やまなし未来創造教育プログラム

最後に

近年、少子化による学生の減少や国からの運営費交付金・私学助成金の削減などにより、大学運営はますます厳しくなっています。そのような情勢の中で、クラウドファンディングは卒業生や在校生との”つながり”を深め、寄付への意識を高める大きな役割を果たしてくれます。また、学生に起業家的な精神と資質・能力を育むアントレプレナーシップ教育としてもクラウドファンディングは大いに活用できるでしょう。若者の活躍が大学に活力を与え、ひいては地域社会の活力に与える。クラウドファンディングはそのような可能性を秘めているのかもしれません。